2022年10月25日
2018年度にスタートした一橋大学大学院「経営管理プログラム」は、東京都心に立地する、社会人が日本語で学べるMBAとして、年々人気が高まってきています。その特徴や魅力について、ワークショップを担当する島本実教授に聞きました。
――対話形式でワークショップ(WS)を進めるメリットはなんでしょう。
テキストに指定した書籍を読めば、ビジネススクールで学ぶようなことは独学でも身につくと誤解をされる方もいるかもしれません。しかし教室では、自分の自信満々な意見に対して、「どうして?」と疑問をぶつけてくる教員や仲間がいて、自らの思い込みを打ち砕かれることが頻繁に起こります。人間にとって、自分が信じていることを疑うことは難しいことです。かつて私自身も、会計学の伊藤邦雄先生が、入学初日の挨拶で新入生全員を前にして、「学習棄却しなさい」とおっしゃるのを聞き、大変驚きました。これまで学んできたことすべて一度、忘れてしまえというわけです。しかし今では、この言葉の意味がよくわかります。WSで教員や仲間と同じ本を読み、議論することは、自分の思い込みを取り去る良い機会になるのです。
導入WSでは、交代で指名される学生がテキストの内容を発表し、議論のポイントを示し、ディスカッションを促します。他の学生は、客観的なエビデンスをもとに意見を主張し、他者を納得させることが求められます。また個人研究でも、課題を見つけ出し、それについて自分で調べて答えを見つけ、他人に伝えて納得してもらうことが重要です。実務でも、無限に時間をかけて完璧な方法を明らかにすることはできず、適切でおおむね妥当な状況認識に基づいて、ライバルより先に自らの構想を実現していかなければなりません。その際にも、自分の考えを相手に短時間で論理的、説得的に伝えるスキルは非常に大事になります。
導入WSの最終回では6つのWSの全員が一堂に会して、各WS内の選抜された報告者が、プレゼンテーションを行います。その後、秋冬学期の基礎WSへと進みます。
――1年時後半の基礎WSでは、どんな点がポイントと思われますか。
続く基礎WSでは、導入WSでの経験などをふまえて分野・教員を選び、その分野でのリサーチの専門的な方法を学ぶことになります。導入WSと同様に発表やディスカッションの形式をとりつつも、基礎WSではとくに調査・分析の方法を学ぶことに焦点をあてています。
導入WSのときには雲をつかむような、ほんわりした話をしていた学生も、この頃になるとだんだんと狭く、深くなっていきます。たとえば「DX化」をテーマにしたいという学生に対し、「どこの企業を見るの?」というところから指導が始まります。1社を対象にするのか、複数社にするのか。インタビューを行うのか、アンケートを行うのか、それらをどう設計するのかといったことを、個別具体的に指導していきます。
2021年度に島本教授が担当した2年生向け WSの動画
https://www.youtube.com/watch?v=hI5Un65IVLA