HUB-SBA MAGAZINE

「経営管理プログラム」の魅力――島本実教授に聞く①

2022年10月11日

「学問の府」での深い学びこそが、経営の予行演習になる

2018年度にスタートした一橋大学大学院「経営管理プログラム」は、東京都心に立地する、社会人が日本語で学べるMBAとして、年々人気が高まってきています。その特徴や魅力について、ワークショップを担当する島本実教授に聞きました。

多くの事例に触れ本質を理解する

――経営管理プログラムの特徴は何でしょう。

経営管理プログラムは、一橋ビジネススクール(HUB)の中の、社会人向け日本語MBAプログラムです。これは職務経験が3年以上の社会人を対象としたコースであり、東京の中心に立地する千代田キャンパス(東京都千代田区)で開講しています。授業は平日の夜間と土曜に行われるので、平日の昼間は入学前と同様に仕事を続けながら学ぶことができ、修了時にはMBAを取得できます。

HUB全体図
ハイライトの部分が、この記事が対象とする「経営管理プログラム」。
平日夜間および土曜日に千代田キャンパスで受講できる、社会人MBAコース。講義は日本語中心。

経営管理プログラムの特徴は、社会人向けの夜間MBAでありながら、一橋大学の伝統であるゼミナール形式で学びを深めていける点にあります。「学問の府」らしいプログラム、つまり、過度に実践や技法に偏らないアカデミックさがあり、教員と学生との対話形式の学びが特色です。対話は、昔から欧米の伝統ある大学で学生の思考を養うために重視されてきたものです。経営管理プログラムは、ビジネススクールにもかかわらず毎年1学年60名ほどであり、一方、数多くの教員を擁しています。それだからこそ、ここでは緊密で深い議論が可能なのです。

こうした特徴は、入学後すぐに実感できるはずです。新入生は入学後の半年間、必ず導入ワークショップ(WS)を履修するからです。私もこの導入WSを担当しています。なおWSはこの後にも、秋冬学期の基礎WS、2年次のWSと3段階あります。学生は2年生の最後に、研究成果をWSレポートとして仕上げて発表します。これは修士論文に相当するものです。

――導入WSは具体的にどんな内容でしょうか。

導入WSは6人の教員が担当しています。一種の担任制を敷いており、丁寧な指導を心がけています。WSによる差が生じないように、最初だけは学生はWSに割り当てられ、テキストも全8回のうち、はじめの3回はどの教員も共通のものを用います。今年度は『日本語の作文技術』(本多勝一著)、『知的複眼思考法』(苅谷剛彦著)、『経営を見る眼』(伊丹敬之著)または『ビジネス現場で役立つ経済を見る眼』(同)を使用しました。ここで、経営学だけでなく、社会科学全般に必要な日本語の書き方や批判的な読書方法、プレゼンテーションの仕方などを学んでもらいます。教員側も横の連携を行いながら、教える内容が自分の専門分野に過度に偏らず、学生がその先どの分野を選んでも困らないようにと配慮しています。

4回目以降は教員ごとにテキストが異なります。私の場合は、2022年度は『ゼロからの経営戦略』(沼上幹著)と『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト)を指定しました。この2冊は事例が豊富なので、入学したての学生にも興味をもってもらえると思います。大学院とは、様々な事例に共通する理論を身につける場ですが、いきなり概念的な話をしてもなかなか頭に入りません。そこで多くの事例に自分なりに触れてみると「ああ、理論とはこのように各事例で共通しているのか」と実感できるはずです。ですから、まずは多くの事例に触れてほしいと私は考えています。

2021年度に島本教授が担当した2年生向け WSの動画
https://www.youtube.com/watch?v=hI5Un65IVLA

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