修了者の声

伊藤 毅

伊藤 毅さん
(2020年3月修了)
(公認会計士・監査法人勤務)

実務を俯瞰する学びの機会を通じ、問いの立て方を身に着ける

経営管理プログラムの第1期生として入学

私は大学卒業後、公認会計士の資格を取得して現在まで監査法人で勤務をしております。監査法人では、10年程度の監査業務の経験ののち、希望して監査法人内のアドバイザリー関連の事業部へ異動し、さまざまなクライアント企業に対して財務会計を中心としたアドバイザリーサービスを提供しています。監査業務では、財務諸表が適正に作成されているかどうかを、会計基準に沿って企業から独立した第三者としてチェックすることが主な役割でしたが、アドバイザリー業務ではクライアントと同じ方向を向いて、プロジェクトにおける目標設定からはじまり、具体的な課題の内容は何か、そしてその解決策は何なのかといったことを検討することになります。クライアントニーズをしっかり把握しつつ、より品質の高いサービスを継続的に提供していくためには、会計の知識だけではなく、一段と高い目線でクライアントのビジネスを理解していくことが必要となります。そこで、経営に関する体系的な学びを得るためにMBAの進学を希望しました。

当時、一橋ではちょうど大学院の再編が行われ、一橋ビジネススクールの夜間の社会人向けプログラムとして、経営管理プログラムが新設されるところでした。一橋では、理論と現実の往復運動という教育方針があり、単なる知識のインプットに限らない幅広い学びの場の創出が目標とされています。また、経営管理プログラムのキャンパスは勤務地と同じ千代田区にあり、通学のしやすさという点からも、これだと考えて申し込みをしました。

仮説思考を身に着ける

一橋ビジネススクールでは、経営に関するさまざまな分野について学ぶことができます。特に印象に残っているものとして経営戦略の授業があげられます。経営戦略では特に仮説検証的なアプローチが必要とされますが、私が専門とする会計の分野ではルールに当てはめて物事を考えることが多く、いかにこのような思考方法を自分が苦手としていたか気づかされました。ここでの学びがアドバイザリー業務をするうえでも生きています。授業の中では、課題となるレポートに対して、教授から毎回丁寧なフィードバックいただきました。

また、マネジメントコントロールの授業では、一般的な管理会計に関する知識を扱うだけではなく、あらかじめ提示されたテーマごとに受講生それぞれがこれまでに実務で経験した管理会計に関連する事例を持ち寄るものであり、実際の業務でも大変参考になることが多く、社会人MBAコースにおける学びの機会の深さを実感しました。

問いの立て方を学ぶ

これらの授業に加えて特徴的な点として、一橋ではワークショップの授業を通じて、各自が研究テーマを自ら設定して卒業時までに一本のワークショップレポートを完成させることがあげられます。主に安田行宏教授に指導いただき、2年次はワークショップレポートの執筆に多くの時間を費やしました。この活動を通じて、研究をするということがどのようなことか学ぶことができたと思いますし、また、学生間の交流もより深くできたのではないかと思います。MBA取得後はご縁をいただき、本学の博士課程においても自身の研究を続けています。

研究では、問いの立て方が7割、その後の作業が3割といわれることがあります。仮説を証明するためのテクニックも重要ではありますが、先行研究を踏まえたうえで、新規性のあるテーマを見つけ、それをいかに研究課題として洗練させていくかという点が重要です。ワークショップでは、このような研究における基本動作をしっかり学ばせていただくことができました。

卒業後も続く学びと人的ネットワーク

社会人MBAには、多彩なバックグラウンドを持った方が集まっています。授業を通じての学びも大事ですが、このような場を通じて、普段はなかなか接点のないような業界の方々とも同級生としてフラットな関係を築いていくことができるのも魅力です。さらに、こういったネットワークは卒業後も続きます。ワークショップの仲間や色々なグループでの勉強会や交流会があり、縦横のつながりを築いていくことができます。

卒業するまでの2年間は大変な道のりとなることも多いと思われますが、ここでの努力が卒業後においても公私ともに多様な場面で実りをもたらしてくれるものと信じております。

(2023年8月掲載)