2026年09月14日
7月25日、本学千代田キャンパスの大講義室にて、一橋ビジネススクール 経営管理プログラム修士1年生による、導入ワークショップ報告会が行われました。この報告会は、導入ワークショップの最終回の授業として開催されるもので、1年生全員が参加し、ワークショップ各クラスの代表者による成果発表が行われます。経営管理プログラムでは、修士1年、2年を通じてワークショップが必修となっており、この報告会では、半年間の研究を踏まえて、具体的な事象に関する分析の報告や今後の研究テーマ案についてのプレゼンテーションが行われました。
外部要因により経営が大きく変化する中で従業員はどのように「働く意味」を見出し、組織アイデンティティを再構築していくのか。ファンドによる売却が決まっている韓国の大手ハンバーガーチェーンの日本支社の従業員を対象として、親会社の売却先が決まるまでの不安定な段階から売却先が決定し、さらに売却後までをリアルタイムで追い、従業員の視点から組織アイデンティティの変化のメカニズムを明らかにしていきます。売却のフェーズに合わせ、従業員インタビューを行う計画です。
日本企業は、事業売却に対するネガティブな印象が強く、特に従業員・取引先など多様な利害を重んじる企業ほど事業売却に踏み切りにくい傾向にあります。そうした中でも能動的な事業分離に成功している日本企業と、事業分離が定着している欧州企業を比較し、何がその推進力となったのかを探ります。取締役会の役割や経営者のリーダーシップ、あるいは業績への危機感など多様な視点で能動的な事業分離の成否を決めるメカニズムを解き明かしていきます。
日本では、健康を訴求する食品の市場は大きく成長しており、多様な出自の企業が市場参入しています。しかし、中には一過性の商品投入で終わる企業もある一方、事業として定着する企業もあり、成否は分かれています。参入企業の祖業(食品・飲料・製薬など)が持つ資産(ブランドや知財、流通経路など)と、健康食品市場のニーズ、開発した商品自体の便益特性との関連性に注目し、事業の定着の成否を分けるメカニズムの解明を目指します。
日本のアート市場は世界的に見て小さく、政府は「文化芸術の持続可能な活動基盤の確保・支援」を重要施策として位置付けています。しかし、文化芸術はその「創造性」と「経済性」の二面性の両立が難しいとされています。そうした中、公的支援なしでいかに持続可能に文化芸術の企業活動を成立させるか。多くの事例に見られる各専門分野からの事業者による分業体制ではなく、1社で企画から作品制作・展示までを手掛ける企業を事例として、その組織マネジメントを研究し、「集団的創造を担保する仕組み」を明らかにしていきます。
「現状に違和感を抱きつつも、孤立を恐れて同調する」といった状況は、集団の中で日常的に多く観察されます。本研究の出発点は「なぜ非合理的な慣行が存続するのか」ということです。この既存の規範を変えるためには、自分だけではなく他者も変化を望んでいることを認知し(認知的解消)、変化に向けて行動し(行動的解消)、それが集団に支持され従来の慣行が維持できなくなる(規範の転換)というプロセスが考えられます。これを自律的に起こすための要素として、「自分たちでも変えられる」という「効力感」に注目し、エージェントベースモデル*を使って解明していきます。
*エージェントベースモデル:独自の判断ロジックを持つエージェントを配置し、集団の中の相互作用をシミュレーションする分析手法
既存事業に最適化された企業において、既存事業を維持しながら新たな事業方針はどのように形成され、組織内においてどのような解釈や判断を経て、継続的な事業として具体化されるのか、そのメカニズムを解き明かすことを目指します。今年度、自分が所属する企業が新規事業の開始を宣言したことから、過去の新規事業の事例とも比較しつつ、機会認識・既存能力・組織余力といった視点から、リアルタイムに観察を行っていきます。事前に原因を特定せずに、観察を通じてメカニズムを特定していくアブダクティブ分析の手法を採用する計画です。
MBAのワークショップとしては、まだ約1年半という十分な時間が残されています。この期間を活用し、さまざまな試行錯誤や挑戦を通じて、新たな研究の方向性を積極的に探求していただきたいと思います。研究プロセスにおいて最も重要なのは、皆さんの知的好奇心をドライブさせることです。「努力は夢中に勝てない」という言葉があるように、自分自身が面白いと実感できるテーマでなければ、その本質的な価値を他者に伝えることはできません。ぜひ夢中になれるテーマに思い切って踏み込んでみてください。
また、日々の業務から一度離れ、ご自身の仕事の構造や意味を再構築する機会として捉えることも大切です。タイパやコスパを意識して無駄を避けたくなる場面もありますが、あえて回り道や寄り道をすることで見えてくる視点もあります。この過程での試行錯誤が、最終的に研究を深く質の高いものへと導きます。やりたいテーマを深掘りする貴重な機会にしてください。
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