2026年08月06日

2025年4月入学
製造業勤務
石原 裕丈さん
私は製造業で技術職として仕事をしていましたが、現在は新規事業部門で事業企画の担当となり、事業戦略や中期経営計画の策定・実行・業績管理・改善施策の検討などを行っています。課長職としてチームを率いながら、まだ答えが定まっていないテーマに対して、事業として成立させるための道筋を描き、関係者を巻き込みながら前に進めていくことが主な役割です。そうした中で、思うように成果が出ない難しさに直面したことがMBAを目指したきっかけでした。実務の中で試行錯誤を重ねるだけではなく、戦略、組織、会計、ファイナンス、マーケティングなど、ビジネスを支える知識を体系的に学び直す必要があると感じたのです。
社内には、一橋ビジネススクールでMBAを取得した同僚もいて、講義の様子や指導内容について聞いたところ、理論と実務的なアプローチのバランスが良いと勧められました。自分でもプログラム内容を調べてみて、特に「理論と現実の往復運動」を重視するカリキュラムに惹かれ、ここであれば、経営に関する知識を体系的に学びながら、それを実践で使いこなす力を身につけられると考え、志望しました。
実際に講義を受けてみると、研究者でもある専任教員の講義の中では理論だけを学ぶのではなく、現実のケースが取り上げられ、具体化と抽象化を何度も繰り返します。実務家出身の講師の講義では、現実の事例紹介ばかりではなく、理論を使って現実の事象を抽象化します。こうして課題を構造的に分析することを学びます。そしてワークショップは指導教員と少人数の学生で構成されています。そこで自分が選んだテーマに対して、問いの立て方、理論的な深掘り、現実での応用可能性を徹底的に考えます。カリキュラム全体の中で個々の講義やワークショップが有機的につながっており、学びが実務と切り離されない点に大きな価値を感じています。また、同じ千代田キャンパスの夜間コースには金融戦略・経営財務プログラムやビジネスロー専攻もあり、それらの講義に出席することも可能です。経営管理プログラム修了要件の履修単位とはなりませんが、それぞれの専門分野の応用編として学ぶことができるのも魅力です。
MBAでの収穫としては、理論に基づいて現実の経営課題への解決策を考えられるようになったことです。技術課題であれば、必ず理論から解決策を導き出しますが、経営は時には経験則に基づいて語られることもあります。私には、なぜそれが有効な施策と言えるのかが分かりませんでした。しかし、MBAで学んだことで理論に基づいて深く考えることができるようになりました。ただ、そうした理論や概念を数多く知れば良いということではなく、課題に対して適切な概念を選び、その概念を深く掘り下げてメカニズムを明らかにすることが重要だと学んだことも、大きな収穫です。横に広げるだけでは表面的なカテゴリーの当てはめになりがちですが、一つの概念を軸に縦に掘ることで、現象の背後にある構造やメカニズム、因果の流れが見えてきます。この思考法は、実務でも非常に役立っています。議論が噛み合わないときでも、相手がどの概念で話しているのかを捉えることで、論点を整理し、自分の考えも説得力のあるストーリーとして伝えやすくなります。経営課題を「概念で構造化する力」を身につけたことが、MBAで得た最も大きな財産だと考えています。
一橋ビジネススクールでは、少人数で議論を重ねるワークショップだけでなく、講義の中でも学生同士の議論の時間を設けたり、特定のテーマでグループワークを行ったりする機会が多く、約60名の同期とは自然と強い仲間意識で結ばれますし、先生方とも密にコミュニケーションを取ることができます。
講義以外の活動でも一緒に食事や旅行を楽しんだり、富士山登頂を目指して登山に出掛けたり、ハーフマラソン完走を目標に授業の前に皇居ランをしたりするなど交流を深めています。今年の春には、私の発案で新入生向けのオリエンテーションを企画しました。入学したばかりの新入生に、履修計画の立て方や大学院生活に役立つ情報などを説明するもので、新入生の多くが互いに初対面だったため、打ち解ける良い機会となりました。また、オリエンテーション開催を呼びかけると、すぐにM2の同期約20名が賛同してくれ、企画や資料準備、当日の説明、懇親会場の選定や会場誘導などにボランティアで協力してくれました。ここでも同期の連帯感の強さを感じました。
今後の目標としては、MBAでの学びを仕事で実践し、担当事業の成果につなげることです。もう一つは、学びを自分だけのものにせず、同僚や友人など周囲の人とも共有し、課題解決や目標達成に貢献することです。実際に、社内勉強会を開き、会計やファイナンスに苦手意識を持つ人が、それらを実務にどう生かせるのかを一緒に考える場を設けています。これにより、自分自身の考えも改めて整理されます。また、MBAでの学びを周囲に還元することにもつながるため、今後も続けていきたいと思います。
仕事やプライベートが忙しく、学業まで手が回らないと感じている方は多いと思います。確かに、簡単ではありませんが、先生方のご指導はとてもきめ細かいです。例えば、講義によっては出席者が質問を投稿できるオンラインフォームが用意されています。先生方は多種多様な質問に対して一人ひとりに、しかも数行のコメントにとどまらず、実に丁寧にアドバイスをしてくださり、とても励みになります。また、独自の強みを持つ心強い同期たちと、時に励まし合い、時に大いに刺激を受けながら、困難を乗り越えていきます。こうした環境の力によって思っていた以上に前に進めるものだと実感しています。MBAでの経験は単に学業にとどまらず、皆さんの人生にきっと大きなプラスになると思います。迷っている方には勇気を持って一歩踏み出してほしいですね。きっと新しい景色が見えるはずです。
(2026年8月)