2025年09月02日
一橋ビジネススクール経営管理プログラムの2年次のワークショップでは、秋冬学期の開始前に、教員とメンバーが海や山に集い、夏合宿が行われます。これは多くのクラスでの恒例行事になっています。ワークショップB(経営)では、8月16日・17日の2日間に、甲州市勝沼「ぶどうの丘」に集まり、中間発表会を行いました。この施設はJR中央本線の勝沼ぶどう郷駅から歩いて行ける小高い丘の上にあります。ワインどころの甲州にあって、ここはまさにワイン好きには天国と言える場所です。
2年次ワークショップでは、メンバーは、ワークショップレポート(修士論文に相当)執筆に向けて、それぞれの関心に従って選択した経営現象を分析し、そこに見られるメカニズムを明らかにすることを目指します。以下では発表の一部を紹介します。
伊藤忠商事は1990年代後半に倒産の危機を迎えました。しかし同社は、トレードを軸にバリューチェーンを築き、出資先からの配当や関連会社利益を収益源とすることに成功しました。発表では、90年代末以降のファミリーマートへの投資の事例を題材に、そのプロセスが分析されました。
オープンソースのソフトウェア(OSS)開発は、皆が使える財産を作るために自社のリソースを使うことでもあります。なぜそれが自社の得にもなるのでしょうか。マイクロソフト社の事例を見てみると、そこにはOSS開発を通じて有能な人材を発見する同社の巧みな人材戦略がありました。
資生堂は1990年代に不調を経験しましたが、その後、業績回復に成功しました。その理由を探る際に、同社のシンボル(花椿)マークの扱われ方を見ると、そこに不思議な一致が見えてきます。全方位の多角化にともないシンボルは隠されるようになりましたが、後にはシンボルの再生を旗印にして、同社は復活していきました。
ゼネコン業界におけるインフロニア社の躍進は目覚ましいものです。同社はコンセッション事業に注力することで事業を拡大し、今や大手の一角を占めるようになりました。そこには同社のインフラビジネスへの大きな事業転換と、それに追随することに躊躇する大手ゼネコンの姿がありました。
他にも台湾の半導体メーカーであるTSMCの躍進、花王やライオンの食器用洗剤でのヒット商品競争、メルカリが先行者を追い抜き個人間商取引ビジネスで主要企業になった理由、IT業界における受注者と発注者の間の法的紛争、日本の製薬産業の高収益企業の経営戦略についての発表がありました。今回はまだ中間発表の段階ですが、いずれもたいへん興味深い論点をもっており、この後の研究の進展が楽しみです。
合宿では、他にも休憩時間にマシュマロ・チャレンジでチームワークの重要性を学び、夕食時には美味しいワインを飲みながら話に花が咲きました。その後、部屋に戻ってからも、日頃の会社での悩みやMBAに進学した際の思い出、グループワークでの楽しかった経験など、皆の話題はつきませんでした。
一橋ビジネススクールでの学びでは、経営学の知識を修得することのみならず、新しい状況下で、自分独自の理論を作り出すことを目指します。夏合宿での徹底的な議論は、そうした学びで得られた実力を、互いに確かめ合うよい経験になります。