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MBA2年間の集大成・ワークショップレポートの振返り~小山貴史さん

2025年03月03日

経営管理プログラムでは、2年間を通じて少人数グループによるワークショップに参加し、経営リテラシーを高めます。2年次には各自で設定した研究テーマに対して調査・研究を進めるとともに、教員や他のメンバーとの議論を通じて考察を深め、その成果をワークショップレポート(学位論文に相当)として提出します。今回は、1月にレポートの提出を終えた小山貴史さん(エンターテインメント業界勤務)に、ワークショップレポートの執筆を振り返っていただきました。


研究テーマ:上方影響力の発現要因

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私の研究は、「上司を動かすには何が必要か」を考えるものです。リーダーシップ論において、部下を動かす行動に関してはさまざまな理論がありますが、上司をマネジメントする、という視点に立った研究はそう多くありません。そこで、ワークショップでは、インタビューによる定性調査と、質問票による定量調査によって、この問いに対する答えを模索していきました。

テーマ設定のきっかけは、私自身が中間管理職として直面していた壁でした。仕事において職階が上の方々に対しても言うべきことを言えるようにならなければ、チームはうまく機能しません。これを実務で痛感していた私は「ボス・マネジメント」と題された書籍を読みあさっていました。しかし、その多くはスキルが中心で、私の知りたい「なぜ、その行動が上司を動かすことにつながるのか」という根底の部分が不明瞭だったのです。それなら、これを自分の研究で明らかにしよう、と決めたのが1年次の11月ごろでした。

結論は、上方影響力は信頼によって生じ、信頼は実務の成果によって生じる、という非常に簡潔なものになりました。言われてみれば当たり前です。しかし、論文を書き終えてみると、研究の真の成果は結論に至る思考の過程にあったと感じています。

2つの難所:インタビューの解析と質問票の構築

研究を進めるにあたって、2つの難所がありました。1つは、27名の方々に協力頂いたインタビューの解析です。約15万字の逐語録を読み返し、具体的な発言から抽象的な概念を抽出・整理する作業は脳がちぎれるようでした。もう1つは、質問票の構築です。2年次の7月、先行研究の質問や尺度をそのまま用いては、私の研究において欲しい情報は得られない、という壁にぶつかりました。その折、指導教員の加藤俊彦教授(経営管理研究科)からの、「他の分野の定量分析で用いられた質問票はどう作られ、どう分析されているかを読み取ってみてはどうか」というご助言のおかげで、光明を得ることができました。一見すると無関係のように思える事象でも、共通する要素はあるものです。同じく、4回に渡る予備調査に協力して下さった同窓生にも感謝しかありません。

得られた成果:執筆を通じて身についた「考える」習慣

私の研究は、結論が一言に収斂し、内容も「目から鱗」という類のものではありません。しかし、この結論は、各章における考察によって紡がれたもので、その思考のプロセスが私にとって価値のあるものになったと感じています。実際、先行研究のレビューによって問いを浮き彫りにし、インタビューから仮説を導出し、質問票調査で仮説を検証する、という執筆の過程で、多くの知識と視点を得ることができました。また、研究方法の採択、論理展開、概念の整理といった執筆のさまざまな局面で、徹底して考える習慣がついたことも、財産だと感じます。論文を書き終え、ようやく社会人としてスタート地点に立てたような気持ちです。

今後の抱負:自己成長の可能性を掴む

MBAでの2年間、自分も知らなかった自分に出会うことができました。入学前は管理会計やM&Aの面白さを全く知りませんでしたし、勝手に不得意だと思い込んでいた分野が数多くあることに気付けたことは大きな学びだと思います。さまざまな部署を転々とし、そのたびに異なる業務に従事してきた私には、正直、専門と言える分野はありません。しかし、だからこそ、自己成長の可能性が広がっていると感じます。これからも、広い視野をもって新たな知識を身に着け、考える日々を送っていきたいと思います。

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