2024年08月26日
7月27日に本学千代田キャンパスの大講義室にて、一橋ビジネススクール 経営管理プログラム修士1年生による、導入ワークショップ報告会が行われました。この報告会は、導入ワークショップの最終回の授業として開催されるもので、1年生全員が参加し、ワークショップ各クラスの代表者による成果発表が行われます。経営管理プログラムでは、修士1年、2年を通じてのワークショップが必修となっており、この報告会では、半年間の研究を踏まえて、具体的な事象に関する分析の報告や今後の研究テーマ案についてのプレゼンテーションが行われました。
コロナ禍を経て、イベントの形態がリアルとデジタルに二極化する中、特に商業見本市などでの偶然の出会いから商談につながるメカニズムを解明し、リアルで行うイベントの価値を明確にすることを目指した研究です。推論として、デジタルでのプッシュ営業などに比べて商談が進みやすいと見込まれ、そのメカニズムの解明が理想的なビジネスイベントの設計につながることを期待しています。
食器用洗剤市場では、1990年代初めに激しくシェアを争っていたライオン、花王をP&Gが95年に「ジョイ」で抜き、2004年には花王が「キュキュット」を発売しP&Gと激しくトップを争いました。その後2015年以降は花王がトップの座を盤石にしています*。これまでの競争状況を見てみると、各社は生活者自身が気づいていないニーズを想像して提案したことでシェアを獲得しており、類似性が見られます。生活者ニーズは、企業間の競争によって創造され、最大化されていくという仮説が考えられます。今後はその仮説の検証と、競争での勝因は何かを明らかにしていきます。
*各社公表情報をもとに独自に集計
環境配慮型製品は、従来品に比べて割高などの理由から選好する消費者が少ないため、市場導入初期においては、マーケティングなどの市場戦略とともに、法的規制や補助金制度などにより有利な事業環境を作る非市場戦略の組み合わせが効果的との仮説を立てています。今後は、成功例と失敗例の研究とともに、非市場戦略としてどのような取組みがあるか、調査していきます。
商業銀行が新興産業に効果的に投資し、産業の発展に寄与するための具体的な指針を提示するための研究です。宇宙産業を題材として、政府や事業会社など他の投資主体の事例から得られる知見を商業銀行に適用して考察し、その独自の役割と可能性を明らかにします。商業銀行の投資戦略高度化のみならず、新興産業の成長を促進する効果的な資金供給モデルの構築にも貢献することを目指します。
消費がモノからコトにシフトする中で、製品サービスを利用することにより得られる体験・経験に焦点を当てたマーケティングが注目されています。本研究では、缶ビールを題材として、一連の消費活動(認知・興味・購入・利用)において、それぞれの経験価値(印象)を数値化するとともに、企業側のマーケティング施策を整理し、それらの相関(メカニズム)を見出すことを目指します。
自らの経験に基づき、伝統的旅行会社におけるミドルマネジメントのあり方に課題意識を持っています。旅行商品という短期契約・季節性という業界特性による単年度主義が、長期的視野を持つ人材の育成を重視しない傾向に繋がっている可能性があります。また、本人がプレーヤー意識を強く持っているためマネジメントに対する内発的動機が希薄になるという仮説を立てています。今後の調査を通じて、最終的には伝統的旅行会社におけるミドルマネジメントのコンピテンシーモデルの形成を提言していきたいと考えています。
まず、皆さんが選んだ問題や現象が本当に意義ある研究になるかどうか、今一度再考してみてください。また、時には研究対象の範囲をブレークダウンし、解けるサイズの問題に再設定することも必要です。成功事例を取り上げる際には、どうしたらその成功要因を実現できるかという境界条件を考えてみてください。'How' questionの方向に思考が向きやすいのですが、その前に、なぜそれが成功したのかという'Why' questionを掘り下げていただきたいと思います。そのうえで、皆さんの選択した研究課題の成果が社会的意義を持つかどうかを常に意識して研究を進めてください。