2024年07月04日
ホスピタリティ・マネジメント・プログラム 5期生
中口 敦恵
ホスピタリティ・マネジメント・プログラムの活動の一つとして、去る3月に軽井沢観光協会のご協力のもと、軽井沢観光振興センターにて株式会社ピッキオ(特定非営利活動法人) 代表取締役の楠部真也氏を講師としてお招きし、『持続可能なエコツーリズム』を題材にした講演会を実施しました。
講演では、エコツーリズムの日本と海外での浸透の違いや、インバウンドの観光客の方々が日本の自然に対し、日本人が想像する以上に大きな価値を感じて訪日していることを知る一方で、これからの観光産業が産業の柱としてさらに盛り上がっていくためには、日本人が日本の自然に対する正当な価値を認識する必要性を改めて感じる機会となりました。
講演後は夕刻に開催された"空飛ぶムササビウォッチング"に合宿メンバーらと参加しました。真っ暗な軽井沢の森の中、ムササビのいる木の前で巣箱に設置された定点カメラから参加者全員で静かにムササビの起床から身繕いまでを観察し、その後は私たちの目の前でのロングジャンプを見守りました。外国籍の方も含め7割は大人でしたが、ネイチャーガイドの方の豊富な知識と解説により参加者全員が楽しめるコンテンツであり、大満足の自然体験型観光となりました。株式会社ピッキオのスタッフの皆様、素敵なプログラムをありがとうございました。
<ご講演の内容を一部抜粋してご紹介いたします>
株式会社ピッキオ(特定非営利活動法人) 代表取締役
楠部真也氏
エコツーリズムは地域振興に極めて有効なツールであり、インバウンドからの評価も非常に高く、ブルーオーシャンです。これからの日本において自然体験型観光が増えていき、ネイチャーガイドの需要が高まるのは間違いありません。観光は日本のトップ産業になるポテンシャルがありますが、そのためには人材確保とエコツーリズムの地位向上が必須です。
日本の自然に対する欧米の評価は高いのですが、多くの日本人はその存在価値に注目せず、アニメ、ゲームに対する海外の評価ばかりに目を向けています。欧米でエコツーリズムは人気で、ガイドの待遇も高いのですが、日本ではいずれも低くなっています。この業界を盛り上げ、優秀な人材が集まるよう魅力的な就職先となるためには、エコツーリズムにおいて「環境保全のしくみ」と「エンターテインメント性」、そして「収益」の3つの軸を成り立たせる必要があります。優秀な人が集まることで、海外からのツアーゲストに対する多言語対応や持続可能な取り組みに繋がります。また旅行者の安全や自然環境、野生動植物保護の観点からも、海外からの同行者が日本国内でツアーガイドを務めるのを諸外国と同様、禁止する法整備も必要だと考えられます。
ピッキオにおいてインバウンド比率は10%強にすぎず、今後はよりインバウンドにシフトしていかなければいけません。地元の人から見ると「何もないところ」と思えるものが、外の視点から見ると価値に捉えられます。日本人自身が自然の素晴らしさを認識して、価値を見出し、伝えていくことが重要です。
代表著書:
観光でお金を生むには"着地型観光"の現状と将来性
ピッキオ:
長野県軽井沢町を拠点に野生動植物の調査および保全活動を行うとともに、エコツアーや環境教育を展開する専門集団。軽井沢と知床で30年に渡りエコツーリズムを展開しているほか、環境教育事業は幼稚園から大学まで幅広く対象にしている。野生動物の保護管理事業ではツキノワグマを一頭一頭個体管理し、軽井沢における人の安全確保と熊との共存を目指している。
HP:https://picchio.co.jp/