2024年06月06日
2023年入学
ECサービス/フィンテック企業勤務
大久保 柳華さん
私は、ECサービスとフィンテックを手掛ける、東証プライム市場上場企業の取締役を務め、企業広報・サステナビリティ・リスクマネジメントを担当しています。2009年の入社後、一貫して企業広報を担当し、2021年に取締役に就任しました。その後、当時の出資先企業について経営陣の一員として大変厳しい決断をしなければならない状況に直面しました。限られた情報の中で、かつ正解がない問題に何らかの答えを出さなければならない経営の難しさを経験し、MBAで学ぶことを決めました。
一橋ビジネススクールを選んだのは、夜間に通えること以外に、経営の実践面だけではなくアカデミックに考えることも重視していると思ったからです。私の場合は、目の前に多くの実践問題があり、それに対して他のマネジメント層から経験則を学ぶことはできますが、経営の構造やメカニズムについては体系的に勉強する必要を感じました。表面上の解決のためのティップスではなく、なぜその事象が起きているのか深く考察できるようになることがMBAでの私の目標であり、一橋にはそうした学びがあると感じ、選びました。
「経営戦略」の講義では、加藤俊彦先生(経営管理研究科教授)から「理論がわかると、これまで見えなかったものが見えてくる」と言われた通り、自社を取り巻く相互作用や、静止画ではなく時間の展開も踏まえたシナリオで見るなど、ケース分析の過程で新たな視点を得ました。青島矢一先生(経営管理研究科教授)の「経営組織」の講義では、グループワークの一環として、ある企業のCHRO(Chief Human Resources Officer)に組織変革の全体像についてヒアリングする機会がありました。その際に、理論を踏まえて考察することで、個別の人事制度の有機的なつながりや、背後にある組織戦略への理解が深まりました。また、三隅隆司先生(経営管理研究科教授)のゼミで、仮説を立ててそれを検証していく一連の研究のプロセスを学んだことで、先行研究において「この研究者は、ここでこう考えたためにこの手法を用いたのか」と想像できるようになり、最近ではアカデミックな論文も読めるようになってきました。
そして、こうした講義やゼミでの学びはもちろんですが、同級生の仲間ができたことが、この一年の大きな収穫です。幅広い年齢層、かつ普段は接点のない業界や職種の方も多く、それぞれが各分野での専門性を持っているため、多様な意見やアドバイスがもらえます。お互いに励まし合いながら、サポートしたりされたりする関係は、社会人大学院の強みだと感じます。
MBA取得後の目標は、経営陣の一員として会社の成長に貢献することにつきます。ただし、会社の成長は、お客様からご支持いただいた結果としてついてくるものであり、それにより従業員の満足度も上がると考えています。現在学んでいることを生かし、事業戦略や組織戦略を描いていくこと、そして私の担当する広報では、お客様や従業員に「選ばれる会社」となるよう広く発信していくことが自分の役割だと思っています。
最近のスタートアップ企業や中小規模の企業では、早い段階で経営層に入る人もいると思います。そうした方々にも改めて経営を学ぶ機会にチャレンジしていただきたいですね。忙しくて余裕がないかもしれませんが、まだ自分の経営スタイルが確立されていない時期や、経営に躓きを感じている時など、経営の理論に立ち返ることは意義があると思います。私の場合は、育ち盛りの二人の子供を持ちながら、職場やパートナーの協力も得て何とか時間を捻出しています。自分だけではなく、家族のライフステージも考慮し、学べるタイミングを逃さず挑戦してほしいと思います。