HUB-SBA MAGAZINE

漠然とした課題をどう解きほぐすか

2024年05月01日

高梨 沙紀さん

2024年3月修了
通信会社勤務
高梨 沙紀さん

職場での経営議論で意見できず、もどかしい思いがMBAを目指した理由

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私は、新卒で入社以来、営業部門での勤務が長いのですが、財務部に在籍した時期が数年間あり、そこで経営についての勉強の必要性を強く感じました。財務部では全社的な案件を経営に近い立場で議論する機会が多くありますが、当時の私は経営に関する知識がなく、上司や同僚に自分の意見を伝えることがなかなかできませんでした。その後、また営業部門に戻りましたが、職務としては事業計画に携わるものなので、やはり経営について勉強したいと思い、MBAを目指しました。

一橋ビジネススクールを選んだ理由は、まずは夜間・土曜のプログラムがあったこと。そして、私は経営学を学んだことがないので、基礎をしっかり勉強したいと思う一方、実務から生まれた問題意識があってMBAを目指したので、「理論と現実の往復運動」という一橋の教育方針に価値を感じました。加えて、財務部時代の上司が経営管理プログラムの2期生で、このプログラムについてある程度内容を知っていたことも後押しとなりました。

研究テーマは、企業における組織間コンフリクトの解消

研究テーマは、企業の事業部制やカンパニー制といった組織がいかに有効に機能するかということで、日本ではいち早くカンパニー制を導入し、多くの事業や組織を抱えているソニーを題材として研究しました。ソニーは、電機部門によるかつての隆盛から低迷期を経て、今日ではまた力強い成長を続けています。どのようなメカニズムで復活できたのか、当時の経営幹部の方々にヒアリングを行い、考察しました。得られた結果は、経営戦略の定石としては一部当たり前ではあるものの、組織や経営管理という面においては、大変示唆のあるものでした。カンパニーや事業部といった組織では、ともすると部門間で対立しがちですが、会社にとっての最終ゴールについて全社共通の理解を最初に得られれば、各部門はそれに基づき活動し、その進捗はKPIとして把握することができます。ソニーにおいても、まずは会社が目指す目標を社内で共有し、戦略やKPIをそれに一致したものとなるよう整備するという常道が、組織力の発揮と強い相関性を持っていることがわかったのです。

漠然とした課題の中で、自分は何を明らかにしたいのかを自問

研究において苦労したのは、論文を書く以前の段階で、いかにテーマを絞り込むかということでした。指導を受けた島本実先生や軽部大先生(ともに経営管理研究科教授)には、「問題が漠然としすぎている」「研究に値する課題のサイズにしましょう」とアドバイスをいただきました。自分が本当に明らかにしたいのは何か、自問する日々が続きました。しかし、これは、漠然としたもの、どこから取り掛かったらよいか分からないような課題について、どうアプローチすべきかを考える訓練となり、今では仕事に生きていると思います。

一方、楽しかったことは、インタビューを通じて新しい発見があったことです。インタビューを行う際には、自分なりの仮説を持って臨むのですが、それが崩れた時には悲しく感じるものの、同時に純粋な驚きと発見の喜びがありました。ですから、事前の想定とは異なる話を聞けた時には、研究が進んだ手ごたえを感じました。

働きながらMBAで学ぶ~「昨日、これ教わりました」

働きながらMBAで学ぶ良さの一つとして、昨日の講義での教えが、今日の職場ですぐに生かせるという点があります。「昨日の講義でもちょうど教わったのですが、学術的にこれは...」という話は、職場でも興味深く聞いてもらえます。MBAを目指すきっかけでもある、上司や同僚との経営議論をできるようになり、成長を実感することで、さらなる学びへの意欲が湧きました。

また、ソニーの研究を通じて、自社の経営への示唆も得られました。今後は、FP&A(Financial Planning &Analysis)といった財務的な立場から経営戦略を考える仕事ができればと思っています。

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