エンリコ・モレッティ著（池村千秋訳）（2014.4.23）
『年収は「住むところ」で決まる : 雇用とイノベーションの都市経済学』プレジデント社

イノベーションが起こる場所は非常に地理的に限定的です。イノベーションの拠点というと、アメリカのシリコンバレーなどがすぐに思い出されますが、日本においてもイノベーションの地理的な集積傾向は顕著です。特許はイノベーションの足跡として、定量的にイノベーションの動向を把握するための有効なデータですが、面積で国土全体のわずか5%を占めるに過ぎない東京圏（埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県）に在住する発明者による特許の数は日本全体で出願される特許の61%を占めています。なぜこれほどにイノベーションが起こる場所は限られているのでしょうか。このような現象の鍵になるのは人的交流による知識の交換です。一橋大学で学ぶ皆さんは、同級生や先輩、後輩との日々の交流の中で多くのことをお互いに学び合っていると思います。時には自分には思いつかないようなアイデアを友人との会話の中で見つけ出すこともあるでしょう。都市の中ではこのような交流がダイナミックに起きており、これがイノベーションの一つの源泉になっているのです。エンリコ・モレッティによるこの本は、厳密な学術的知見に基づいてイノベーションの経済地理についての知見を与えてくれる本です。また、あなたの働くべき場所についての示唆も与えてくれる本です。ぜひ読んでみてください。