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ホスピタリティ・マネジメント・プログラム修了生座談会――2年間で手に入れた俯瞰的視点と強い絆、学ぶ習慣

2023年04月04日

ホスピタリティ・マネジメント・プログラムの修了生である、江森敬太さん(1期生:2020年卒、鉄道会社勤務)、古橋健太郎さん(2期生:2021年卒、ホテル会社勤務)、成田暁彦さん(3期生:2022年卒、オンライン旅行会社勤務)、府岡ともさん(4期生:2023年卒、レジャー企業勤務)に集まってもらい、MBAでの学びと現在について聞きました。司会は同プログラムで「ホスピタリティ・マネジメント」の授業とワークショップを担当する福地宏之准教授、「ホスピタリティ・マーケティング」の授業とワークショップを担当する鎌田裕美准教授が務めました。

ーー(福地) なぜみなさんは一橋のMBA、とりわけホスピタリティ・マネジメント・プログラムで学ぼうと思われたのでしょうか。

府岡 コロナで緊急事態宣言が発出されるなどし、もとの状況に戻るまでには時間がかかると思いました。その間に何か勉強しておきたいと思い、母校で再び学ぼうと決めました。他校のプログラムも検討しましたが、業務との親和性を考えてもここが最適だと判断しました。

成田 外資系に転職して、会社の幹部がほとんどMBAホルダーであることに気付き、自分もかつて海外MBAに憧れていたことを思い出しました。調べてみたところ、国内MBAという選択肢があり、さらに、働きながら学ぶこともできると知って決断しました。

古橋 私の場合は、主体的なきっかけがあったわけではなく、勤務先からの働きかけがあってMBAを受験しました。15年近く同じ会社で仕事をしていて視野が狭くなっていると思っていたので、外の世界を知る必要性を感じていました。それに加え、焦りもありました。社内では中堅に差し掛かっているにもかかわらず、農学部出身の私は経営を体系的に学んだことがなかったからです。

江森 私も勤務先の人事部から話をいただいて受験しました。会社としてはインバウンドを含めた観光に力を入れたい、そのために専門的な視点を持った人材を育成したいと考えたのだと思います。

ーー(福地) 実際に入学してみて、印象に残っている授業は何でしたか。

府岡 「M&Aの理論と実務」(田村俊夫教授)がとても印象に残っています。日頃の業務には直接関係しませんが、普遍的なテーマを体系的に学べましたし、興味深い分野であることもわかりました。

成田 私は「経営実戦論」です。土合朋宏客員教授の授業でしたが、マーケティングのフレームワークを学びつつ、実際の映画の知財を使ってビジネスプランをつくるワークは刺激的でした。

古橋 「経営哲学」(田中一弘教授)が印象深いです。一番知識のなかった分野ですし、コロナ禍で「会社とはなにか」を考えるようになっていたせいもあり、経営哲学の重要性を実感できました。もうひとつ挙げるなら「経営組織」(青島矢一教授)です。企業経営者に実際にインタビューをし、経営会議にも出席させてもらいました。この経験は、学生という立場でなければできなかったと思います。

江森 福地先生のワークショップが良い経験になりました。ホスピタリティ・マネジメント・プログラムでは、ワークショップのメンバーが2年間ほぼ同じなので親交が深まります。プログラム全体でみても1学年10名ほど。私の代は年齢の幅が、思っていたより広かったのも良かったです。20代も、中間管理職クラスも、定年間近の役員クラスもいて、集まるとそれが一つの会社のようで、互いに経験値を補完しながら議論を作っていく楽しさがありました。

府岡 私は鎌田先生のワークショップに所属しました。2年間のワークショップでの学びは深いものとなりましたし、横のつながりが得られたのも良かったです。私の代はホスピタリティ業界の人だけではなく、金融機関やシンクタンクの方も学んでおり、他業界の方とも密にコミュニケーションできました。少人数だけに、縦のつながりも強いですよね。

ーー(鎌田) みなさん、平日の昼間は働きながら、平日の夜間や土曜日に勉強するというライフスタイルだったと思いますが、両立は大変だったのではないでしょうか。

府岡 会社の決算とレポートの締め切り、テストがどうしても重なるのでその時期はしんどかったですが、職場のみなさんの理解があって助かりました。

成田 私は、入学前の勤務状態が続いていたら音を上げていたと思います。コロナにより、期せずして多いはずの出張がすべてなくなり、仕事がフルリモートになったことで救われました。授業は平日がメインでしたので、土日は課題に充てられたのも助かりました。

古橋 私は入学1カ月前に第一子が生まれたのですが、妻や親、そして職場の仲間の理解を得て勉強に集中できたのは、とても幸せでした。

江森 私も第一子が生まれたのが入学3、4カ月前です。周囲の理解、助けがあったからこそであり、その分、自分でもしっかりやらなければと思って計画的に勉強するようにしていました。「この時間からは勉強する」と決めて予定表に入れてしまうと、仕事も意外とその時間までに終わります。働き方まで生産的になりました。

府岡 たしかに私も、勉強のために減らした残業時間は、MBAを終えた今も減ったままです。

ーー(鎌田) 2年間の学びは、今の仕事にどのように活きていますか。

江森 自分の引き出しが増えたと感じています。以前なら、見たことのない山が目の前に現れたとき、どうやって登るのかわからなかったと思いますが、複数のルートが浮かぶようになりました。それから、後輩や部下に何か指摘をする際に、かつては漠然とものを言っていましたが、今は本質的な指摘に近づけているのではないかと感じています。さらに言えば、MBAで身についた毎日勉強する習慣をキープしています。

ーー(鎌田) 何を学んでいるのですか。

江森 本を読むことと英語の勉強にそれぞれ1時間ほどを充てています。最先端の情報は英語で発信されますし、社内だけで通用するスキルを身につけていてもダメだと思ったからです。2年間、私は会社に費用を負担してもらっていましたが、私費で学んでいる人たちが少なからずいたことも大きな刺激になっています。

古橋 私は2年間で俯瞰的な視点が身につき、フレームワークを当てはめて考える習慣を身につけられたと思っています。理論と現実の往復運動を実感することもあります。

成田 お二人とは少し別の話をすると、上層部、特に海外のヘッドオフィスのメンバーとの議論での共通言語が得られたと感じています。海外の上層部からすると、私は地球の裏側の現地採用社員に過ぎませんが、それでもMBAを持っていると、同じ前提で議論ができると見られます。ホスピタリティ・マネジメント・プログラムは、経営管理プログラムのサブブログラムですから、一般のMBAで学ぶ理論や基礎もしっかり学べたことが良かったと思います。

府岡 同感ですね。経営に関する基礎体力を身につけられたと思います。私は在学中に、希望していた部署に異動できたのですが、それも、勉強する意欲があると評価してもらえたためかもしれません。授業で言われた通り、卒業直後はバスタブにお湯が満ちた状態だけれど、栓が抜けていてお湯が減っていく一方にならないよう、今後もお湯をはり続けたいです。

福地 このプログラムの趣旨は、学びを活かしてホスピタリティ産業の付加価値を高めて、世の中に貢献してもらうことです。みなさんの今後の活躍に期待しています。

鎌田 私たち教員も、各所で活躍している修了生のみなさんから大きな刺激を受けています。今後も教員と学生という関係を超え、業界・業種も超えた交流を続けていければと思っています。

座談会に参加したメンバー
左から鎌田裕美准教授、府岡ともさん、成田暁彦さん、江森敬太さん、古橋健太郎さん、福地宏之准教授

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