HUB-SBA MAGAZINE

基礎ワークショップの最終報告会イベントが行われました。

2023年01月26日

去る、1月7日(土)、一橋ビジネススクール経営管理プログラム基礎ワークショップの最終報告会が、本学千代田キャンパス経営管理研究科の大講義室で開催されました。

基礎ワークショップとは、春夏学期の導入ワークショップに引き続き、秋冬学期に開講される1年生全員必修の少人数プログラムです。1年次のカリキュラムでは、各自の研究テーマをブラッシュアップし、それを解き明かすために必要な学術的方法論を学び、その成果として具体的な研究プロポーザルを作成します。最終報告会では、各ワークショップの代表者がその内容、発想、発表の出来栄えを披露しました。

ワークショップA 豊川知顕さん
ワークショップA 豊川知顕さん

今回は、久しぶりの完全対面での開催で活気が溢れるなか、トップバッターで登壇したのは、Aクラス代表の豊川知顕さんでした。「優れたアントレプレナーは、市場を下から見るか?横から見るか?」というタイトルで、成功した起業家が市場をどのような切り口で見て、それはエフェクチュエーションの考え方とどのように相互作用しているのかについての発表がありました。リサーチのきっかけは、シリコンバレートップのベンチャー・キャピタル、「ベンチマーク」のピーター・フェントン氏の言葉でした。それは「優れた起業家というのは、既存の市場をそのまま見ておらず、違う角度でみて独自の市場の切り口という概念を軽々と超えていく思考の持ち方をしているのではないか」というものです。発表で、豊川さんは、起業家がどのように市場を見ているかについて解明していきたいとの思いを熱く語りました。

ワークショップC 寺西亮士さん
ワークショップC 寺西亮士さん

Cクラス代表の寺西亮士さんからは、「機能性表示食品の購買に寄与するシグナリング情報の分析 -特にリピート購買に至る意思決定メカニズムについて-」と題した発表がありました。これは効果が不確定なものなのに市場がこれだけ伸びているのは何故か、背後にある消費者心理は何なのか、という切り口で消費者の購買意思決定メカニズムを明らかにすることを目指したものです。冒頭、会場への問いかけから始まり、時折笑いも起こるなか、聴衆の共感をつかむ演出でプレゼンテーションがスタートしました。今後の研究としては、消費者アンケートなどでいろいろなケースを調査していくとし、これに対して教員からは「消費者心理には機能性だけではなく、広告戦略も大きな影響を与える。これまで長く親しまれている商品について、どういった戦略があったかというところから調査をしてもよいのではないか」という新たな着眼点を示唆するコメントがありました。機能性表示食品という身近なテーマを題材にした研究で、今後の展開にも大いに興味がわくところです。

ワークショップE 芽根幸裕さん
ワークショップE 茅根幸祐さん

Eクラス代表の茅根幸祐さんからは、「アクセラレータープログラムが新興企業に与える影響-Y Combinator出身企業の調査-」というタイトルで、国内外のスタートアップ企業の成長について発表がありました。支援が不十分な日本のスタートアップに対して、シリコンバレーのエコシステムなどは、良質な経営資源が一カ所に集中します。Y Combinatorのアクセラレータープログラムでは、初期段階の企業に投資しながら起業のノウハウを伝授し、支援を受けた企業はM&AによるExitを果たしたのち、別の事業で再起業したり、他のスタートアップを支援する側に回ります。こうした好循環によってノウハウが蓄積しているといいます。今後、この研究では、アクセラレーションプログラムが、スタートアップ企業のその後の「スケーラビリティ」、「成長スピード」、「Exit Value」に及ぼす影響について検証していきたいそうです。

このほか、いずれのクラスからも、新しい視点に着目した素晴らしい発表があり、それに対する質疑応答では、盛んなディスカッションが行われました。今後の研究方法について、仲間からのアドバイスも多く寄せられ、1年次の総まとめとして、大変充実した報告会となりました。

会場の様子
会場の様子

イベントの後半には、各教員による2年次ワークショップのショーケースセッションが行われました。2年次では、基礎ワークショップで学んだことをベースにして、1年間をかけてワークショップレポート(修士論文相当)を執筆していきます。ショーケースセッションの初めに、島本実先生よりワークショップの目的や全体としての進め方について話があり、次いで担当教員が、各ワークショップの専門領域や教育計画について説明を行いました。受講生はこれらを踏まえて参加するクラスを選びます。

軽部大先生からは、2年次のワークショップを通じて、「他人の発表資料が自身のインプットになる、自身の発表資料が他人のインプットになる」として、全員でラーニングコミュニティを作りたいとの熱意が示されました。2年次には教員の指導のもとワークショップで切磋琢磨をしてワークショップレポートの完成を目指します。この努力はきっと修了後の活躍に大いに役立つことでしょう。

Y Combinator : カリフォルニア州シリコンバレーに拠点を構えるベンチャー・キャピタル(https://www.ycombinator.com/

基礎ワークショップ最終報告会
発表者

Aクラス 豊川知顕さん
「優れたアントレプレナーは、市場を下から見るか?横から見るか?」
Bクラス 鳥井淳さん 
「PC向けCPU市場の競争逆転のケーススタディ」
Cクラス 寺西亮士さん
「機能性表示食品の購買に寄与するシグナリング情報の分析 -特にリピート購買に至る意思決定メカニズムについて-」
Dクラス 近藤勇佑さん
「社外取締役の選任実態と経営パフォーマンスの関係 -機関設計変更時の分析-」
Eクラス 茅根幸祐さん
「アクセラレータープログラムが新興企業に与える影響 -Y Combinator出身企業の調査-」
Fクラス 河井隆之さん
「変革をおこした組織についての研究 -ラグビー日本代表は、なぜここまで強くなれたのか?-」

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